アール・ブリュットと鑑賞教育 ―その「作品」との出会いによる可能性―

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日本福祉大学福祉社会開発研究所『日本福祉大学研究紀要-現代と文化』 第 141 号 2020 年 9 月 1  要 旨  本稿は,美術の世界で近年注目されてきている「アール・ブリュット(Art Brut)」という分 野における,既存の芸術的文化から影響を受けずに創作されている「作品」について着目し,そ れらの鑑賞教育への導入,とくにVTS(Visual Thinking Strategies)で用いることの可能性 について考察を行った.アール・ブリュット「作品」は,既成の秩序,規範を容易に躊躇なく超 え出たものを表現しており,他なるものと独特な関係性を示し,その意味世界もわれわれとは異 なる別のものを表しているといえる.こうしたものを鑑賞することは,受容する側(鑑賞者)に とって体験してこなかった経験に基づく世界観との衝撃的な出会いとなり,そうした世界の存在 の気づき,さらには他者理解の深まりへとつながりうる.このことはVTS のもつ,作品そのも のと対峙していくという特徴と親和性があり,年齢的には4 歳ころからが対象となりうること, アール・ブリュット「作品」で見出しうる意外性が,子どもたちの身近な題材を扱ったものの発 見や関心の連続をもたらすといったことが見出された.

 キーワード:アール・ブリュット,「文化的芸術」,鑑賞教育,Visual Thinking Strategies

 1.はじめに

 美術の世界においては近年,アール・ブリュット(Art Brut)もしくはアウトサイダー・アー ト(Outsider Art)といった分野が注目されつつある.前者の名称は,自身がアンフォルメル (不定形の芸術)の画家でもあるJ.デュビュッフェが創作したもので,日本語に訳すと「生きの 芸術」や「加工されていない芸術」(服部 2003: 18)といった意味となる.後者はアール・ブ リュットを英国に紹介,導入した美術史家のR.カーディナルが名づけたもので,「部外者の芸 術」といった意味となる.ここではこれら二つを,主流とみなされうる美術界であるところの 「文化的芸術」の外側(outside)に位置づけられるアート,といった意味でさしあたりとらえて

アール・ブリュットと鑑賞教育

   その「作品」との出会いによる可能性   

小 坂 啓 史 

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